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執筆者の写真秀明 櫻本

これからのICUに必要な研究?

患者の「快適性」の追求

あなたは何のために研究をするのでしょうか?看護の発展のため、患者の利益のため、さまざまな回答があるのではないかと思います。ここ数年でICUは様変わりしました。眠らされていた患者は、覚醒し、生活者としての顔を見せてくれるようにもなりました。従って、最初の問いに戻りますが、『ICUのこれからに必要な看護研究』を考えるということは、『覚醒し、生活者としての顔を見せてくれるようになった人』の幸せを考えることだと思います。覚醒するということは、今まで感じなかったことを患者は『感じ』『考える』ことでもありますし、訴えられなかったことを『訴えられるようになる』ということでもあります。従って、ここ数年の研究課題は、ICUの快適性を改善するということになるのではないかと思います。実際、療養環境や面会(家族との時間)をターゲットにした研究が増えてきています。また、患者の自覚症状に注目した研究もますます増えていくことと思います。そこには、治療中の症状はもちろん、今はやりのPICSやQOLも含まれます。QOLは患者立脚型アウトカムといって、患者が真に求めることを反映すると言われています。今ICUでも、本当の意味で、患者中心に研究が進み出しています。


テクノロジーの発展とICU

『ICUのこれからに必要な看護研究』を考えるというのは、なかなかに難しいお題です。『これから』というのには数年後のことも、10年後や20年後だって含まれているのですから。病気は社会の影響を受けます。『むかーし、むかしのことじゃった』の時代にはよっぽどのことがなければ、病気とはならなかったはずです。片足が腐ったとか、目が見えないとか、それこそ明らかな異常がなければ、です。しかし今は違います。例えば、症状はないけど、血糖が高いだけでも病気とされています。こうした違いは、検査をする技術と、それを許す経済基盤が物を言います。みんながお腹を空かせていれば、検査や治療より『おにぎり』という訳です。でも、今は違います。つまり、ICUのこれから(近未来)を考えるためには、今後の社会がどうなっていくかを考える必要があるわけです。

今後、この社会はどうなっていくのでしょうか。インターネット上の近未来予測には、高齢者が増えて大変、死場所に困るとかネガティブなことばかり。でも将来はそんなに悪くありません。便利なテクノロジーと社会の変化はすでにそこまできています。おそらく、今後数十年もしないうちに、人は単純労働から解放されます。例えば、レジ打ちや物品の管理、掃除などがそれにあたります。今でもすでにそうした傾向がありますよね。コンビニなどではセルフレジ、お家でも丸い形がキュートなお掃除ロボットのル○バが頑張っています。この流れは医療にも押し寄せます。

 例えば、様々なテクノロジーとA Iのフル活用で、カルテ記録や、患者の監視、バイタルサイン測定はなくなり、患者の移送は輸送ドローンのお仕事になるでしょう。単純な手技は、人の手を模したロボットにとって変わられ、人工臓器の開発と機械による自動的な治療によって医師・看護師は治療の直接的な提供者ではなくなるのではないかと思います。さらに、治療の場は、地球から宇宙へと足を伸ばすのではないかと思います。すでに、有人飛行も気軽に行える時代は秒読みの段階なのですから。


AIが医療現場に与えるもの

こうした近未来、その先には何があるのでしょうか。単純労働から解放された医療者には、患者のそばでより人間らしい何かができるのではないかと思っています。ひとは、より『ひと』そのものとして働くようになります。誰かを、楽しませ、幸せにするそういった仕事がより求められるようになってきます。それは核家族を通りこしたおひとり様の時代に、『死にゆく患者の手を、やさしくにぎり、祈る、癒し手』かもしれません。また、『患者と共に人生を旅するスナフキン』のような存在かもしれません。とにかく、ひとの人生の幸せに、より純粋に『ひと』として貢献するための研究が近未来の看護には必要になってくることでしょう。そのときICUがまだ存在しているのかわかりませんが。

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